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出産費用、いくらかかる?「101万円以上」も。民間団体の調査で判明

1. 「出産育児一時金」(42万円)で出産できた人は7%

産科医院で出産するのに、どのくらいの費用がかかると思いますか?
出産経験のある人なら、だいたいの想像がつきそうです。
まもなく出産!という方は、ご自身で調べているかもしれません。

私は子供がいないため、出産や育児のことってほとんど考えたことがないので、答えられません(-_-;)。
ただ、社会保険労務士をやっているので、健康保険制度から「出産育児一時金」が出るはず。確か「42万円」だったな……。
ということだけはわかります。

きょうは、出産費用について「気になる調査結果」を紹介します。
調査したのは、民間団体「子どもと家族のための緊急提言プロジェクト」。
2022年4月に結果を公表したので、下にリンクを貼っておきますね。

調査は、2022年4月1日~15日にオンラインアンケートで実施。
2018年1月1日以降に出産した1228人(47都道府県)から有効回答を得ました。

健康保険制度の「出産育児一時金」(42万円)の範囲内で出産できたのは、なんと7%だけ。
回答者の約半数は61万円以上かかっていて、101万円以上の人も4.9%いました。
都市部のほうが、費用が高い傾向があります。
「出産育児一時金」という公的な支援だけでは、まったく足りないのです。

【参考】子どもと家族のための緊急提言プロジェクト

2. エステ、マッサージもパッケージに

ちょっと脱線しますが、出産の料金は、病院によってまちまちです。
高いところもあれば、安いところもある。
そして、出産料金は妊産婦がすべて支払うのですが、負担を軽くするために、健康保険制度に「出産育児一時金」(42万円)が設けられています。

ちなみに、風邪などの「病気」については、診察や治療の料金を国が一律に決めています。
全国どこの医療機関で受診しても、不公平が生じないしくみになっています。
しかし、通常の出産は「病気」ではないため、「料金を国が一律に決める」というルールの対象外。
だから、料金を産科医院が自由に決められるのです。

話を「子どもと家族のための緊急提言プロジェクト」の調査結果に戻しますね。

調査結果では、出産費用に「エステが含まれていた」「マッサージが含まれていた」という人が、それぞれ1割強いたそうです。
エステやマッサージがパッケージになっていて、「エステやマッサージを付けない」という選択ができなかったとみられます。
「特別な食事」や「赤ちゃんのお世話料」を支払わざるをえなかったケースもありました。

都市部では、そもそも産科が少なく、病院の選択肢も限られてしまう。
自宅からあまり遠いのも困るし、やむなく、必要不可欠でないエステやマッサージも込みの料金にするしかない……。
そんな事情がうかがえます。

また、回答者の半数以上が「入院予約金」を求められていました。
予約金の額は、5万円以上が61.1%。10万円以上が26.8%、15万円以上が16.6%。
予約金が、出産費用全体を引き上げる要因になっているようです。

3. これでは子どもを産めない!悲痛な声も

調査の「自由記述欄」には、悲痛な声が並んでいます。

「都内は高いし、産院も少なく激戦。エステとかなくていいから安くしてほしい」(東京都)
「教育にも多額の負担があるのに、(子育ての)入口の出産でなぜこんなにお金がかかるのか」(山梨県)
「個人負担は10万円くらいにならないと出生数は増えないと思った」(千葉県)
「子どもを産みたいけど、出産費用を見たら、二人目は悩む時期があった」(島根県)

また、出産だけでなく、妊娠・出産全体を通じての費用負担についても意見が寄せられました。

「毎月の妊婦健診に4,000~10,000円が飛び、その末の多額出費は痛かった」(東京都)
「母子健康手帳交付前の初診が自費で、妊娠40週超過の健診も自費。おかしい。少子化は国難なのに、もう少し助けてほしい」(京都府)

母子健康手帳や妊婦健診については、調査結果資料の後段で、専門家の考察が加えられているので、ポイントを紹介します。

日本では、
・母子健康手帳と妊婦健診の「補助券」を受け取るには、妊娠を証明する「確定診断」が必要。
・「確定診断」の費用は自己負担しなければならない。
・多くの病院では、妊娠10週以降でなければ妊婦健診の「補助券」を使えない。「14週以降」と決めている病院(東京都内)もある。
・「補助券」を利用できない時期の健診は自費で受けることになり、負担が大きい。

出産そのものの費用だけでなく、妊娠中の費用もばかにならないのです。

4. 少子化大国ニッポン、これでいいの?

日本は、先進国の中でも少子化が著しい国です。
1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す「合計特殊出生率」は、1・34。
5年連続で低下しています。
東京など都市部の自治体では、
合計特殊出生率が2.07以上でないと、現在の人口を維持できません。

人口減少は、経済規模の縮小、労働力不足、国際競争力の低下、医療・介護費の増大、財政の危機など、様々な弊害をもたらします。
もう何十年も前から指摘されているのに、思うように合計特殊出生率が回復しません。

「子どもと家族のための緊急提言プロジェクト」の調査結果資料では、以下のように指摘されています。

・ドイツやフランスでは、公的支援が充実していて、無料で妊婦健診や出産ができる。
・日本では、出産費用の負担が「産み控え」を招いている。
・少子化に歯止めをかけるには、20歳代~30歳代前半で出産した人が、もう一人安心して産める環境を作る必要がある。

私は、42万円の出産一時金があれば、出産費用は何とかまかなえる、と思っていました。
しかし、東京など都市部では、この2倍の費用がかかる可能性もあるのです。

このブログではふだん、企業の「労務管理」について書くことが多いです。
社会保険労務士の業務(社会保険と労務)のうち、「労務」の部分ですね。
でも、この調査結果がたいへん示唆に富んでいたので、記事を書いてみました。
「社会保険」にかかわる話なので、当然、このブログの守備範囲です!
これからも、時折、社会保険に関する話題を取り上げていきます。

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